真のユース年代の日本一決定戦をご存知ですか。高校サッカーとJクラブユースが揃って日本一をめざして戦うのが高円宮杯U-18サッカーリーグ・チャンピオンシップです。
高校サッカーの強豪校として有名なのは、市立船橋、青森山田、流経大柏などなど。それに対し、Jリーグのクラブチームがもっているのがユースチームで、浦和レッズ、柏レイソル、セレッソ大阪など。
サッカーの上手い選手は、Jリーグのユースチームに行くって流れができてますが、実際に高校サッカーとJリーグのユースチームの実力の差はどうなのでしょうか。
本記事でわかること
- 高校サッカーとユースはどっちが強いのか
- プロになるならユースでやるべきなのか
- 真のユース日本一決定戦の高円宮杯とは
ここでは、高校サッカーとJリーグユースチームはどっちが強いのかを検証してみました。
高校サッカーとユースはどっちが強いのか
結論からいうと「実力差はないがプロになるならユースの方がいい」。
どっちが強いのかというと、その時々のチーム編成や大会でのコンディション状態もあるので、はっきり差をつけるのは難しい。
後述する高円宮杯プレミアリーグの歴代優勝チームを見ればよくわかりますよ。交互に優勝チームが変わってます。
ただし、高校サッカーは、戦力が常に安定するわけではなく、Jクラブユースチームと比べると圧倒的に安定感に欠ける点は不利です。
また、上手い選手はJリーグユースを選びがちですが、あえて高校サッカーの強豪校を選ぶ人もいますし、ユースに昇格ができなかった中村俊輔や本田圭佑は高校サッカー出身。
なので、実力差はないというのが結論です。では、選手育成という点ではどちらがいいのでしょうか。
中村俊輔の考えは
横浜マリノスのジュニアユース(中学)出身の中村俊輔は、ユースに昇格ができず桐光学園高校へ進学しサッカー部に入学しました。
ジュニアながらユースと高校サッカーを経験した中村選手。ユースと高校サッカー、どちらが選手を育てるのに適した環境なのか。あるインタビューに応じた中で、次のように語っています。
「環境は関係ない。その人、その選手次第」
サッカーの環境や知識はJリーグクラブの方が整っていたが、部活は学校生活の一部であり、グランド整備から始まり、ボール拾いや上下関係など、サッカーと直接関係ないことも多々あったみたい。
だからこそ「誰かから与えられたメニューだけをやるのではなく、何が足りないのかを自分で考えて練習している」と、気づいて、考えて、行動する力がついたみたいです。
中村俊輔は、置かれた環境の中で「結局は自分自身がどう振る舞うか」だと言っていますね。
ほかにも、その現状に警鐘を鳴らしている人もいます。
流経大柏の本田裕一監督の考えは
千葉県を代表する強豪校、流経大柏の本田監督は40年以上にわたって高校の現場にいる監督です。
定期的に海外にも足を運んで、世界の育成を学んでいる本田監督は「Jリーグユースと高校の強豪校がいい勝負しているというのは何なの」と警鐘を鳴らしてます。
「プロになりたい人はユースに行かないとけない」とまで語ってます。
「世界のA代表レベルだとテクニックとフィジカルは最高点まできていて、あとはメンタルと戦術。本当は高校から戦術をやるべきで、レアルやバルサは育成の段階からそれをつなげてトップチームにあげている。バルサ出身の久保、レアルの下部組織の中井が日本で育てられたのかというと育てられない」
Jリーグのクラブは、プロ選手の育成に投資した方がいいと思っているんですね。
本田監督の考えも「実力差はないが、プロになるならユースの方がいい」ということなんです。
高校サッカーとJリーグユースそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
高校サッカーとは?
高校サッカーを語る上で最高峰の大会は、全国高校サッカー選手権大会。毎年12月下旬から1月上旬にかけて行われ、開幕戦と準決勝、決勝は国立競技場で開催されていたので「冬の国立」とも呼ばれてました。
国立競技場の建て直しもあり、今は埼玉スタジアムで準決勝、決勝は開催されています。
元々は関西で試合が行われていたのですが、第55回大会(1976年度)より「関西でスタンドを満員にするのは難しい」などの理由から関東(予選は千葉、埼玉、東京、準決勝から国立競技場)で開催されています。
1918年に第一回大会が開催された歴史のある大会なんです。高校サッカーで有名な高校は、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
- 静岡学園
- 市立船橋
- 青森山田
- 流経大柏
- 四日市中央工業
- 日章学園
- 矢板中央
- 仙台育英など
強豪校出身のJリーガーも数多くいます。2010年のワールドカップの日本代表は、ほとんどが高校サッカー出身者でした。ただ特に最近は、高校サッカーは盛り上がりに欠けてきています。
開催時期や歴史も違うため単純に比較はできないですが、甲子園よりスター選手が出にくい、視聴率、認知度も高くないのが現状です。
Jリーグユースチームとは?
Jリーグユースチームとは、Jリーグの各チームが運営するアカデミーで、高校生が所属するチームのことです。
サッカーのエリートが所属しており、
中学生はジュニアユース
高校生はユースチーム
の3つで構成されており、上のチームに入るには昇格しなければならず、競争は激しく、狭き門を突破しなければなりません。
U-16日本代表(16歳以下の日本代表)22名中21名がユースチーム出身ということからも実力の程がうかがい知れます。最近はユースチーム出身者が日本代表に選ばれてきています。
高校サッカーとJリーグユースの実力差はないといいつつ、ガチンコで勝負する大会があります。それが「高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ」です。
高校サッカーとユースチームのガチンコ勝負
高円宮杯サッカープレミアリーグは、全国の上位20チームがプレミアリーグEASTとWESTにわかれ、1年近くリーグ戦を戦うリーグのこと。
その優勝チームがファイナルへ出場。「真の日本一」をかけて1試合を戦います。
高校サッカー強豪校とJリーグユースチームも参加できるリーグなので、これが「真の日本一」を決めるともいわれています。2019年の参加チームを見ていきましょう。
- 青森山田高校(青森県)
- 尚志高校(福島県)
- 鹿島アントラーズユース(茨城県)
- 浦和レッドダイヤモンズユース(埼玉県)
- 大宮アルディージャU-18(埼玉県)
- 市立船橋高校(千葉県)
- 柏レイソルU-18(千葉県)
- 流通経済大学付属柏高校(千葉県)
- 清水エスパルスユース(静岡県)
- ジュビロ磐田U-18(静岡県)
- 名古屋グランパスU-18(愛知県)
- 京都サンガF.C. U-18(京都府)
- ガンバ大阪ユース(大阪府)
- セレッソ大阪U-18(大阪府)
- ヴィッセル神戸U-18(兵庫県)
- サンフレッチェ広島F.Cユース(広島県)
- 愛媛FC U-18(愛媛県)
- アビスパ福岡U-18
- 東福岡高校(福岡県)
- 大津高校(熊本県)
名だたる強豪校とJリーグユースが並んでいますね。
プレミアリーグは、1年のリーグ戦の結果、下位2チームはプリンスリーグへ自動降格します。かわりにプレーオフを勝ち抜いた4チームが昇格。なかなか厳しいですね。
では、真の日本一を決めるプレミアリーグの過去優勝校を見ていきましょう。
高円宮杯プレミアリーグの優勝校
EASTの優勝チームとWESTの優勝チームが埼玉スタジアムでぶつかります。過去の優勝チームは次のとおり。
2012年 サンフレッチェ広島ユース
2013年 流通経済大学附属柏高校
2014年 セレッソ大阪U-18
2015年 鹿島アントラーズユース
2016年 青森山田高校
2017年 FC東京U-18
2018年 サンフレッチェ広島ユース
2019年 青森山田高校
2011年から優勝チームを見ると、
・高校サッカー 3回
・Jリーグユース 6回
こうしてみると、Jリーグユースの方が優勝回数は多いですね。
優勝回数イコール実力差とはいえませんが、Jリーグユースチームは安定的な戦力を確保できるという点で有利なのかもしれません。
まとめ
高校サッカーとJリーグユースとチームの実力は単純には比較できません。1試合勝負だけで判断することもできませんし、その時々のコンディションもあります。
ただいえるのは「実力差はないがプロになるならユースの方がいい」ということ。
とはいえ、高校サッカー出身のプロも多いですし、ユースチーム出身者はプロに入ってから伸び悩むことが多く、プロになってから課題を抱えている選手がいるのも現実です。
エリートで育ってきたのが、かえって邪魔しているのかもしれません。本田圭佑みたいに、ユース昇格が果たせなくてもプロとして大活躍する選手もいます。
中村俊輔がいっていたように、実力をつけるには「どんな環境にいても自分がどう努力できるか」が大事ということですね。
ただ、これだけは言えるのは、Jリーグユースチームがあることで、日本サッカー全体のレベルアップしていることは間違いないでしょう。